toughness or stability

新人採用は、タフよりバランス


採用の際に、資格や語学レベルよりもメンタルタフネスを重視している企業もある。うちの会社もそれを要件にはしていないが、会社説明会なんかでは「メンタル的にタフじゃないと、辛いっすよー」と案に脅し(免責事項?)はかけている。


メンタルタフネスって言うと聞こえがいいが、昔の精神論か「ど根性」論と変わりない。うちの会社は、体育会系理系のようだ(*1)。人事部長も学生時代はラガーとして暴れていたようで、いまだに鼻の骨が折れたままくぼんでいる。役員にも少林寺拳法の達人や極真空手の使い手がいる。
タフといえば「タフガイ」とか「タフネゴシエーター」とか「ターミネーター」とか、かつてのアメリカ人ビジネスマンのステレオタイプを想像してしまう。米国人ビジネスマンにとっては、メンタルタフネス=「勝ち抜く精神力」という意味だろう(*2)。
ストレスをウィルスに喩えて、メンタルタフネス=精神免疫力と訳す人もいるが、残念ならが精神に免疫機構はついてない。もし脳の神経ネットワークにストレスフルな情報だけシャットアウトしまうような機構があったら、人生気楽な気もするが、生きていけない気もする。


メンタル面については「タフネス」より「安定性」のあるやつの方が、長い間会社の中でやっていけると思う。若いうちはタフというだけでも食っていけるとは思うが、管理職になったらタフなだけじゃね。今は、リーダー像にけっこう「寛容さ」なんかも求められる時代だから。
精神的安定性は、メンタル・スタビリティとかメンタル・バランスとも言われるけど、stabilityというとものに動じないみたいな感じもするので、むしろバランスといった方がぴったりくる。ぜんぜんものに動じない人かと思ってたら、実は単に鈍感なやつだったってのは、よくある話し。何があっても表情すら変えない人かと思ったら、実はただ無表情なやつだったってのも、ありそう。
精神の「安定」といっても、多少揺れ動くのは、精神の働きそのものだし、多少揺れることで諸々のストレスやら不運もやりすごせるというもの(*3)。ただ揺れ方が一方に偏りすぎて本人が倒れてしまったり、揺れ幅が大きすぎて周りまで揺れだしたりしないように、適度なバランスが維持されてることが大切。周りの人まで揺らして、自分がびびってるのをごまかそうとする人がいるけど、アレは迷惑だからやめてほしい。


長い会社生活の中でこれから生き残っていく人、経営まで登りつめる人には、「まっとうな人」であることが案外求められているなと思う。それだけ、いままでの会社で生き残る人はまっとうなやつじゃなかったとも言えなくもない。(*4
「まっとう」というのは、別に「真面目」とか「常識的」とか言う意味じゃなくて、人間的にバランスがとれているってことだと思う。真面目で常識的な人は悪くはないが、常識が通用しない不安定な今の時代、変化についていけない気がする。安定志向な人もダメかな。安定志向な人って、いつも不安を抱えている不安定な人だからね。


<本日の教訓>
Don't try to act tough. : 強がるのはやめなさい。

*1:社員の3分の2が理系学科出身。ゆえにコミュ能力の社内研修に力入れてます。

*2:日本企業でもメンタルタフネスを「失敗して落ち込むだけで終わらないやつ(失敗から学んで、次にチャレンジするやつ)」という意味で使っている企業もある。その企業は、北米の企業をクライアントにしている。そりゃタフでないとな。

*3:「もう死にそうー」とか言ってるやつはいっこうに死ななくて、「まだまだがんばれる」といってる人が倒れたりするというアレ。適度な「あそび」がないと、マシンは動かなかったり、壊れやすいっていうアレ。

*4:うちの人事部長による関連会社の新社長の評価が「まっとうな人だったよっ!」だったwww