fatty '80s

JLS2008-2009AW



80年代ファッションの取扱注意


先日、地下鉄大手町駅で80年代なテイストを感じさせる男の子を見かけた。
テラテラなケミカル素材でできた紫のシングル・ライダース*1に黒のジーンズ、平らな鋲飾りの編み上げブーツ。髪型も今風に毛先ラフな仕上げだけど、もみ上げがない。80年代初頭にテクノカットっていわれた系統スタイルのアレンジ。その子は茶髪だったので、寝起きのアンディー・ウォホールみたいだった。


80年代的と感じながらも、やっぱり今風だなと思ったのが、シルエット。
80年代にはあり得なかった超タイト。ライダースもレディース並みに袖も細いし、ジーンズはもちろんスキニー。男子が80年代風味を取り入れるときの、今的お約束だな。
「80年代の美味しいところだけサンプリングして、シルエットはタイトにすること」
色や素材、ディテールは80年代テイストにしても、まるまる全部80年代風にするとアウト。あくまでリミックス感覚で。


実際は、80年代ファッション、特に男子服は、前後の時代に比べても相当ゆったりしたルーズなシルエットが主流だった。ジャケットもボックスシルエットで身幅も太かったが、肩幅もMで45cmぐらい*2。パンツももちろん、もも太め→すそ細めのテーパードが主流。全体的には肩が強調された逆三角形シルエット。
今から考えるとずいぶんマスキュランな格好が長く続いた時代だったな。男子服にピンクとかペパーミントとか、スイートな色目や、かわいいチェック柄が流行ったときも、シルエットだけは男っぽかった*3


逆三角形なマニッシュなシルエットが、80年代男服の本質だと思うんだけど、80年代テイストが注目されてるのに、そのエッセンシャルなところはぜんぜんリバイバルしないのが、とっても今的で素敵だ。
80年代は、70年代のウーマンリブから一歩進んで、女性が強くなった時代というヒトもいるけど、はっきり言うと女性が男性化した時代だったと思う*4男女雇用機会均等法の成立に向けて日本のフェミニズムは、女性を主張するというより、男性と同化する方向に進んでしまった*5。女の子が男物のジャケットや革ジャンをテロテロなワンピースに着るもの流行ったりしたし。男物のスーツをそのまんま女の子が着るのも「あり」だったりした。
今は、その真逆だもんな。男子が女物ジャケットを着るのは、よくある話。女物ジャケットのLを細身男子が着ると、あっと言う間に今風タイト&コンパクトなジャケットに!そんな女物でも着れてしまうような華奢でナイーヴな男子像が今の男服の本質なんだろう。


何をどう着てもいい時代だからこそ、時代の雰囲気のエッセンシャルなところは、はずしちゃいかんということだな。

*1:まるで古着のメンバーズ・オンリー・ジャンパーみたいな感じ。

*2:今はMでも肩幅40-41cmってとこ

*3:80年代末のデカエリ・おでこ靴ムーブメントは異常というか例外的かもしれない。でもあれは幼児服化という90年代のファッションの流れを先取りしていて面白かった。最終的には'00年代のゴスロリにまでつながる息の長いムーブメントを生んだし。

*4:上野千鶴子先生が登場するのはこの時代

*5:すぐにその反動は来たけど。ボディコンとか。