taxi driver

柳ばし小松屋

江戸前一と口あなごの佃煮
小松屋柳橋の袂
1890円(1パック70g)


最近、仕事でタクシーに乗ることが、すっかりなくなってしまった。現役時代は、夜明けの首都高をタクシーでぶっとばして家に帰って、風呂ザバッといって、ひげジョリっとやって、サクっと着替えて、始発で出勤、なんて生活を続け、ついには、年に何度も同じ運転手さんの車に乗りあわせ、すっかり馴染みになってしまったなんてことも。。。
でも、私用+自腹となると、タクシーに乗るのは月に2、3回。高速も使わない。それでも、まだまだ勿体ない気がするので、必ずタクシーの運転手さんを話をすることにしてるんだけど、結構、これが面白い。乗ってるのは高々20〜30分だけど、裏話や豆知識を聞かせてもらえるもんで。
写真の柳橋松屋も、ある運転手さんに「ちょっとイイ話」付きで、教えてもらったお店。ちょいと長くなりますが、以下、そのときのやりとり。(この辺で、羽織をヌギヌギ)


先日、病院まで行こうと、手を上げたら、止まってくれたのがKMタクシー。KMって接客マニュアルがしっかりしていて、応対がとっても丁寧なんで、こりゃー良かったって感じで乗り込んだワケ。
運転手さんも、当然丁寧な口調で、「どちらまで、いかれますか?」に始まり、今日の天気とか、さしさわりのない話題をふりつつ、話好きなのか、黙っててほしいのか、探りを入れつつ、走り始めた。
客と話をするのが嫌いぢゃなぃって雰囲気がしたんで、いや実は、うちの親父、来週、手術で入院するんですよーなんて話をこっちからはじめたんですワ。でも病院によって、医者の善し悪し、看護士の気が利く、利かないってのがありますよねぇーって、言ったあたりから、運転手さんの琴線に何か触れたのか、彼も自分の話を始めたんです。最初のうちは、業務用の標準語口調だったんだけど、話に熱が入るにつれ、だんだん巻き舌に、、、


「うちの母親もね、入院したことがあるんですけどねぇ、医者にだまされちゃったんですよ。実はね、入院中おふくろが夜ベッドで寝ている間に脳梗塞やっちまったんですよ。その夜はうちのおやぢが、病院で看病してたんですょ。で、翌朝、見舞いに行ったら、何かおふくろの様子がおかしいって言うんですよ。それで、医者を呼んで見てもらったら、寝てる間に脳梗塞やってたんですね。どうやら真夜中になったらしくて、そのまま何時間もたってたもんで、手遅れでもう、首から下が、麻痺して動かなくなっちまった。」


「そりゃぁ、たいへんでしたねぇー。」


「それでね、このまま、こんな病院に入れとくわけにもいかねぇから、特別な老人ホームかかなんかに移るか、どうするかって思案してたら、うちのかみさんがね、あんたお母さんも病院や施設はいやだってんだから、うちに来てもらったら?子供ももう、独立したから、あたしがお母さんの世話やって構わないってんですょ。」


「いい奥さんですねぇ。なかなかそんなコト言えるもんぢゃありませんょ。」


「まぁ、そんなことで、今、お袋を引き取って、うちで介護してるんです。寝たきりっつても、べつにボケちゃったわけぢゃねぇから、これが結構てぇへんなんですょ。体は動かねぇけど、頭だけは、しっかりしてますからねぇ。しかも、うちのお袋は、浅草生まれの浅草育ち、もう86なんだけど、口の方は、あいかわらず達者ときた。」


「え?! ぢゃ、運転手さんも、浅草生まれ?」


「えぇ、そうなんですょぉ。ま、今は立川の方に家建てて、うちのお袋も、今、そこで寝たきり生活なんですけどね。動けねぇもんだから、食べるのだけが楽しみらしくて、毎日、あれ食べたぃ、これ食べたぃっつってるんですょ。。。。この前もね、アナゴの佃煮のお茶漬けが食べたぃっつーんですょ。それも、柳橋にある小松屋のアナゴの佃煮ぢゃなきゃ、どーしてもいゃだってつーんですょ。佃煮だったら、どこでもてぇしてかわんねぇだろって、思うんだけど、お袋は一度言い出したら聞かねぇからねぇ、柳橋まで行って買ってこいってんですょ。」


「そりゃぁ、大変すね。」


「しょぅがねぇから、休みの日に車で立川から柳橋まで行ってきましたょ。2時間もかかって。で、店についてアナゴの佃煮ってぇのをみたら、一瓶2000円するってんですょっ!それもこんなちっせぇ入れ物なのに。2時間かかって一瓶だけ買って帰るのも、癪に障るんで、2ビン買ってけぇりましたょ。」


「もー半日仕事ですね。」


「往復4時間かけた4千円の茶漬け、高くつきましたょ。お袋がそこまで食いてぇってんだから、こっちも少しは、ご相伴に預かりてぇって思ってたら、お袋のヤツ、ぺろぺろって、あっというまに二瓶全部、茶漬けにして食っちまった。寝たきりなのに、食欲だけは旺盛なんだょなぁ。」


「そんだけ懐かしの味だったんでしょぅねぇ。こっちまで、食べたくなりましたょ。」


「もう、また買ってこいっ、なんて言われても、二度と行きたくねぇって思いましたょっ。4時間かけて2千円払うんだったら、今度はオレが自分でつくってやろぅかって思って。で、お袋には黙って、ホラ柳橋のアナゴだょっつって、食わしてやろーかな、、、hahahaha」


ここまで、一席聞かされりゃぁ、やっぱ買いに行くでしょ。
行ってみたら*1、まぁ、橋のたもとの柳の下に、めちゃっちっちぇーっお店が、ありました。しかも、川にはみ出して建ってるの。佃煮屋と釣り船屋を併営してて、上が佃煮の店で、下には釣り船が係留されてる。ええ感じやんっ♪Great Edo domestic natural junk food shop!


旬の佃煮「江戸前一と口あなご」や「大潮限定・手むきあさり」は1パック1千円台と高め、でも定番の「きゃら蕗」「小はぜ」などなどは、1パック千円以下だから、いろいろ取り混ぜて購入。
アナゴ茶漬け、さっそくやってみました。佃煮の味付けが濃い目なので、茶碗に一切れが二切れで十分。お味は、、、、甘さ控えめ、「江戸前の味」!。とくに香辛料で味をごまかしてないので、お茶漬けのときは、海苔や山椒の実なんかをトッピングするのもお薦め。
もちろん、通販もやってるので、お取り寄せ好きは、是非ご賞味を。


追伸:店番のお嬢様が、ジョディ・フォスターばりのお美しい方でした、、、7月は店周りが朝顔でいっぱいになるとか。また、買いに行こっ♪

*1:さすがに地下鉄で行った。JR or 都営浅草線「浅草橋」駅下車、徒歩5分。