time & skull

LAD MUSICIAN × CITIZEN スカル・ブレスレット シルバー+ステンレス・スチール
LAD MUSICIAN FLAG SHOP @原宿
18万9000円


一生モノって、こんなもののこと。孫・子に残すスピリット。


珍しく、ぽーんと景気良く大枚はたいてしまった。身に着けるもので1点10万円以上のものは、時計以外は、買わないことを自分にお約束してたんだけどなぁ。禁を破るだけの価値のあるものに出会うこともあるってことだ。
LADがシチズンとスカルのブレスレットを共同制作したというんで、早速見に行く。ステンレスのケース一杯にデッカイ銀製髑髏が鎮座している。ベルトもステンレス、留め金はカルチェ・タイプなので見た目すっきり。スカルの顔立ちは、ガボール系かな。ビル・ウォール系だったら、買わなかったかも(笑)。スカルは何度も試作を繰り返したそうだ。原型師泣かせのスカル・アクセの話を聞いたのは、テンダーロインのボルネオ・スカルリング以来だな。
ところで、コレ、別にスカルをパカッと開けると中に時計が入ってるわけぢゃない。時計のムーブメントやら文字盤のあるべきところに、ドッカンと髑髏があるだけ。店員さんも言ってたけど、よくシチズンもコラボを了解したなー、だって、時計屋に時計本体はいりませんっていう注文なのに。
腕時計でもないのにこのお値段が高いとみるか、適当とみるかは、意見の分かれるところ。中古のロレックスなら買える値段だし。でも、それなりのシルバーアクセ・ブランドが作ったら、20万円以上の定価をつけるだろうな。24万8千円ぐらいか。それでも、クロム・ハーツのウォッチ・ケース(50〜60万円)の半額だけどね。あれは、バンド部分もシルバーチェーンだから、その辺を差し引くと、20万円ぐらいって妥当な値段設定じゃない?
値段が多少高くても、元々買う覚悟で店に言ったんだけどね。写真を一目見て、とってもLAD MUSICIANならではの作品だなぁと直感したから。この腕時計髑髏には、デザイナーの黒田さんらしいウィットというか、シニカルなエスプリに加えて、彼が元来持っているハード・コアな一面が、ひょいと顔を出してるような感じがする。


「腕時計」に「髑髏」という組合せに、なんといってもウィットとメッセージを感じる。たぶん欧米人が見たら、とっても納得すると思う。そしてたぶん、ニヤリとするだろうな。彼らからすると、古くからのシンボリズムの現代的組合せだから。
髑髏の象徴する意味は"MEMENTO MORI"(死を忘れることなかれ)。メメント・モリは、キリスト教的には"Vanity"「現生の空虚」という意味を持つようだけど、個人的には、元々の「明日死ぬかもしれないのだから、今日を大切に生きろ」というポジティブなメッセージだと思いたいところ。
一方、時計も欧米では「死」の象徴とされる場合がある。「光陰、矢の如し」「門松は冥土の旅の一里塚」と同じ意味。だから時々、時計と髑髏はセットで描かれたりしている。オールド・スクールのタトゥーの定番柄にも、羽の生えた砂時計の上に髑髏がのっかっているものがある。そこに"MEMENTO MORI"と書かれたリボンが絡む図柄もある。Wikiによるとスコットランド女王、メアリー一世は、髑髏の図柄が彫りこまれた銀の懐中時計*1を持っていたそうだ。


深読みすれば、LADのこのブレスは、砂時計が腕時計に変わっただけじゃなくて、今や「腕時計にはもう時計としての意味はない」っていう皮肉なのかもしれない。
最近、電車乗ってても、みんな、いい腕時計している。ロレックスをしているサラリーマンは一両に何人もいるし、オメガは高校生がするブランドになってしまった。電車に乗らないで済むヒト達は、パテック・フィリップだ、フランク・ミューラーだ、なんて感じなんだろう。しかし、みんな、時間は、携帯電話で確認してるぢゃーないの?もう腕時計は高級宝飾品の一種になっちゃった。トゥールビヨンも、機能はすれども、実質はお飾り。まさに"Vanity"でしかない。


ところで、携帯が持って歩くのが嫌いなわたしは、これからどうやって時を知ればいいんだ?


追記:
このブレスを実際にはめて生活してみて面白かったのは、自分が案外、頻繁に腕時計で時間を確認する生活をしていたってことがわかったことだ。無意識に左袖をまくって、腕時計を見てしまう。でも、そこには、こっちを見つめる髑髏があるだけ。「あぁ、そうか、自分は結構、時間に追われる生きかたをしてるんだ」ってのに気づかされる毎日。


良く考えたら、コレも立派に時計なのかもしれないなぁ。自分が死ぬまでの時間を告げる時計。

*1:日本語版Wikiでは「腕時計」となっていたが、メアリー一世は16世紀の人なので、時代的におかしい。たぶん訳の間違いだろう。→英語版Wiki参照