「引き」で見る

カナダのジャパニーズ・スタイルの大御所Paul Jeffriesがかつてインタビューで日本の彫物(いわゆる和彫り)について面白いことを語っていた。
日本の彫物は全体(全身)を見ても、ストーリーがあって見ごたえがあるが、クローズアップしてある部分だけ見ても(全体のストーリーから切り離してみても)楽しめる点が素晴らしいといった趣旨のことを言っていた。さすが総身(Full Body Suit)を得意とする人らしい見方だと思った。
欧米の伝統的tattooいわゆるold school tattooは、ワンポイントで何かの記念のたびに入れていくこと自体が伝統みないなものだ。古くは、船乗りが生きて帰ってこれた記念に増やしていったものだとか(沢山tattooの入ってる船乗りは歴戦の勇士というわけで、それが空軍機のAir Tattoo(爆弾マークを増やすやつ)までつながっている)。だから一つ一つのtattooに、それぞれ物語りがあり、独立しているのが普通だったのだろう。
当初から総身の完成図をある程度想定している日本の彫物は、tattooとは設計思想が違うのかも。(もっとも日本の彫物も、いきなり総身のスタイルになったわけではないが、既に幕末にはスタイルとして確立していたらしい)
他方、太平洋系トライバルtattooは、遠めに見て、くっきりわからないと意味がなかっただろう。海洋民族だけに船の上でも、部族や氏と特定できる文様で構成されているんだと思う。今はサーフ系の人がトラディショナルなトライバルをガッツリ大面積で入れていたりするが、海の上だとなかなか景色として似合うと思う。
トライバルtattooで、全体構成は日本の彫物の「ひかえ」や「みきり」になっている作品を最近良く見かけるが、「引き」で見ることを想定した日本の彫物の設計思想を上手く取り入れていると思う。
http://www.lost.art.br/subvert/juntattoo02/03a.jpg