misery & crime

唐獅子牡丹



貧困の日本史


今年の夏休みの課題図書「裏社会の日本史」*1
3年前に会社の近所の本屋でジャケ買いして、そのままになっていた本。
葛飾北斎が85歳のときに描いた「唐獅子牡丹」の肉筆画が表紙になっていて、中身も見ずに思わず衝動買い。*2
中身については、フランス語で書かれた本の翻訳ものなので、少々日本語的にとっつきにくくて、ずっと放置。。。でも読み始めると早かった。


前半が被差別部落民や貧民の歴史(主に江戸後期から90年代まで)で、後半がヤクザとテキヤの歴史に分かれている。
なんといっても前半の「貧窮の近代史」が面白い興味深い(ヤクザとテキヤの方は、日本人にとっては某週刊誌の方が面白いかもしれないという印象)。山谷、寿町、釜ヶ崎、番町などの地区がどうやってできたか(作られたか)も様々な角度から描かれている。


ニートだ、ホームレスだ、派遣村だ、と言っていられる現在が、どんだけ豊かか思い知った。*3

*1:フィリップ・ボンズ著、安永愛訳、筑摩書房2006。同氏の著作「Peau de brocart. Le corps tatoué au Japon.(錦絵の肌―日本の総身刺青)」も誰か訳して!

*2:装丁は神田昇和氏。本の見返しが美しく深い「紫色」というあたりにぐっと来た。

*3:底なしの貧困は、階級制度(士農工商+2)が廃止され四民平等になってから始まったという指摘は、これからの時代によく認識しておく必要がある。江戸時代の最下層2階級は、良くも悪くも最後のセイフティーネットとして機能していたらしい。今や「刑務所が最後のセイフティーネット」と言われる時代に突入、、、牢屋のキャパ(規模も、費用も)が限界を超えたら、都市に非合法な受け皿が生まれるかもしれない。