easy life or difficult life

振込め詐欺の犯人は、トラブルに巻き込まれた経験が豊富だ。きっと。


振り込め詐欺の連中が、次々新しいバリエーションを編み出し、これだけ報道されているのに上手く騙してしまうのは、彼ら自身がいろんなトラブルにあったことがあるからだろう。トラブルのリアルな状況設定なんて、実経験がないと描けんぞ。ま、こんなビジネスにも失敗経験は役立っている。
被害者には失礼だが、失敗しないように無難に生きようとしている人ほど、こういうトラブルに巻き込まれやすいのでは。まじめに生きすぎた私も、これまで2千数百万円は合法的な詐欺*1で失っている。失敗のない無難な生き方は、一見賢明に見えるけど、長い目でみると、やっぱりリスクがあるってことだ。


無難に生きてしまうと経験知が不足する。
経験知には、成功体験から得られるものもあるけど、大部分は失敗経験から得られる知恵だ。成功体験は、こうすれば成功するということを教えてくれるが、過去の成功体験が足を引っ張るのはよくあることだ。状況判断を誤れば、成功体験と同じことをやっても失敗する。的確な状況判断は、失敗からこそ学べる。
ただし、1つや2つの失敗経験ではダメだ。たぶん300回*2ぐらい失敗しないとひとつの知恵にならない。うちのおやじは、よく私に「俺はおまえの反面教師だからな」といばっていたが、反面教師1人じゃ、何の役にもたたない。この道を行くと穴に落ちるよというのは教えてくれるが、道は300本にも分かれている。残り299本のうち、成功への道は1本だ。間違った道が一つわかっても、成功への確率が上がるわけではない。
経験知を積むには、失敗が不可欠。大切なのは、失敗しないように生きることでなくて、コケテも起き上がり、どん底に落ちても這い上がってくることなんだろう。そういう人こそ、ビジネスでManager(経営者)になってほしい。
仕事の現場では、一度や二度は大きなトラブルの渦のど真ん中に巻き込まれたことのある人の方が仕事を上手くやる。「上手くやる」っつーのは、Manageの元々の意味だ。たとえ過去にトラブルを上手く乗り切れなかったとしても、そこから這い上がってきたんだから、前向きな人にちがいない。トラブルで痛い目・怖い目にあった人は、多少のことでは動じない。トラぶった経験があってこそ、最悪の事態や、ひそむ危険を事前に想像できるってもんだ。だから、同じようなトラブルを繰り返す人は×、トラブルから何も学んでない。


失敗しないよう無難に生きてきた人は、いまいち魅力に欠ける。する話も常識的だけど面白くもない。歳をくった人ほどそうだ。歳をとった人間の強みは、経験知しかない。単なる知識なら若いヤツの方が新しいのを持っている。判断力も経験知に比例する。そして、経験知の価値は失敗とそこからの立ち直りの数で決まるんだと思う。
あぁ、そうか、学校では「失敗しない」ようにはどうするかしか教わらなかったな。それどころか、どうすれば「成功する」かも教えてくれない。ま、成功の方法は教えようがないか。。。だからこそ、「失敗してからどうするか」をちゃんと教えないとね。

*1:世間では、それをビジネスと呼ぶ。たいていのビジネスは合法ってだけで本質的には詐欺と同じだ。詐欺とまでいかなくても、多少博打性はある。

*2:なんで300回かっつーと、2つ理由がある。ひとつは失敗学の権威畑村洋太郎氏が著書の中で「失敗時例300集まると有効」と指摘していたこと。もうひとつは、事業の成功率は昔から「千三つ」(1千分の3≒1/300)と言い伝えられていること。