neet or hole

<こころ>の穴々


インターンシップを調べていたら、なんか、今の大学生の就職ってますます大変になってるのね。


むかしから、「面達」とか、テクニックを就職で駆使することは必要とされてたけど、なんか今はまるで社会人がステップアップ転職するときに求められるようなこと(例えば即戦力とか、ストレス耐性とか、目標設定能力とか...)がいきなり新入社員求められるらしい。第二新卒がライバルだからしょうがないのかもしれないが、いきなりだときつい。だからインターンやっておかないとなという話になるのだろう。いくぶん就職ビジネスサイドが煽っている感もあるが。


なんでも、就職面接のときには、自分が「やってきたこと」「やりたいこと」を自分の言葉で語れるのは当たり前で、自分ができることは何かまで「自分の言葉」で言えないとダメなんだそうだ。
んなこといっても、そんなことを実感を持って言える大学生なんて数%しかいないだろう。社歴15年の私だって、さすがに「やってきたこと」は語れるが、仕事に関して「やりたいこと」を語るのは難しい(やらなきゃならないことはいくらもあるけど)。大学生の多くは「自分がやりたいこと」が何かわからなくて困っていることだろう。それどころか、自分自身に「ぽっかり穴」があって自分って何なのかわからないって人が15-25%は占めるんじゃないか。
自分自身が空虚なのに、就職のときには、「自分の」やりたいことを「自分の」言葉で語るという演技を多くの人がいっしょうけんめいやっているんだと思う。それはものすごい労力が必要だし、相手にも、自分にもうそをつき、演技するわけだから、その後にどっとくる疲れはとても大きいだろう。
今は、そういう演技のできる人じゃないと就職もできない。演技力のある人だから、無事就職後も、案外上手く職場や客先とやっていくこともできるんだろう。つーことは、演技は就職後もずっと続けなくちゃならない。。。これじゃあ、「仮面うつ」状態だ。そんなの2〜3年で磨り減ってへたっちゃって当然だ。
で、なんとなく今の仕事は自分の道じゃないという気がして、第二新卒がまた増える→新卒の就職が厳しくなる→ますます新卒が演技しなくちゃならなくなる、というインフレ・スパイラルになってるのかも。
根底にある「穴の開いた自分」という漠とした不安感・不安定感をどうすれば埋められるのか、何か手はないのか。自衛隊にでも入れって言った人もいるけど、そうしたら、そうしたで、まるでベトナム帰還兵みないな若者がぞろぞろ出てくるだけかも。ただでさえ、今の日本のメンタルな状況って、ベトナム敗戦後の70年代アメリカに似ているのに。


こころに穴ぽっかり系が増える一方で、とにかく「特別な人」になりたい系が同じぐらいの割合でいるのでは?とも想像している。
「特別な人」になりたいっていうのは、有名人とか芸能人とかセレブとか、とにかく人から注目されたいって意味。一見すると、そういう人は、ガッツがあるように見えるし、がんばりもするし、自分の主張もはっきりしているかもしれない。見た目もきらびやかで華やかな人だったりする。でも、あくまで他者の目からみた評価を得たいということであって、自分でこうありたいっというのとは違う。そのこころの芯のところでは、自分がない、穴があるんじゃないか。他人の評価を必死で集めて、その穴をふさごうと躍起になっているようにも見える。こういう人は、実は自分に自信がなかったりする。ちょっとでも否定されたり、失敗すると、めちゃくちゃ落ち込む。あるいは何かけなされた日にゃぁ、逆切れする。
こころの穴を「演技」で隠そうとしている人、「評判」で埋めようとしている人、二つあわせると30%以上になるのかも(いつもながら直感ですが)。


NEETが出てきといって「日本の将来はどうなるんだ」なんて憂いている方々もいるけど、NEETなんて昔から一定数いたよ、きっと。戦後日本の低失業率時代のほうが異例だとぐらいに思ったほうがいい。江戸〜明治時代なんて都市にはぷらぷらしてる若いやつが腐るほどいたんじゃないか。フリーターつーか日雇いでいろんな職業転々とするのも、江戸下町の若衆の普通だったかもと思う。少なくとも落語のネタになるぐらいはいたんだろう。
NEETなんて特殊例を気にするよりも、その背後にいて、顔には出さないけど、若い世代の数十%を占めるかもしれない「こころの穴」に注意した方がいい。


でも、どうすれば穴がふさがるのかは、私にはわからない。tattoo入れても、きっと穴は埋まらないだろう。それじゃぁ、リスカと変わらないもの。
ひとつだけ言えるのは、穴の開いてない自分とか、本当の自分とか、もう一人の自分とか、あのときこうしていればこうだったかもしれない自分とか、あのときこうしてもらっていればこうなったろう自分とか、そんなものは、みんな「ない」ってこと。
いやいや、ちょっと違う。もっと進めて言えば、これは自分じゃないとか、あれが本当の自分だとか、自分がなくて穴があいているとか、「ある」とか「ない」とか言ってること自体、なんの益もないのだろう。自分があるかないかなんてことから、ふっと離れられた瞬間、人は生きやすくなるんじゃないかと思う。